今や自作PCの世界もすっかり成熟し、市場には単一の機能にとらわれず様々な付加価値をもったパーツが溢れるようになってきました。しかし求める機能が増えれば増えるほど望みに適う商品が無くなっていくジレンマも同時に増えるもの。ことにチップセットや設定の豊富さ、サイズ規格などチェック項目が多岐にわたるマザーボードは、それほど無理な要求をしなくてもすぐに選択肢が無くなってしまうことが少なくなく、パーツ選びの鬼門になっています。
更に最近は低品質なコンデンサが安定性に及ぼす悪影響を指摘する声が相次ぐようになり、マニアの選択肢はますます狭まりつつあります。こうしたなか、一部の過激派は「オーディオマニアを見習って我々もコンデンサくらい自分で交換してしまおう」と声を上げ自らはんだごてを手に取りました。筆者も過激派のはしくれとして先達の情報を手がかりに、おっかなびっくり挑戦してみたところ・・・あれ、意外といけるんじゃね・・・?
これが出来ればマザーボード選びも怖くない、というわけで今回はコンデンサの張り替えに挑戦してみます。
まずはコンデンサを入手するところから始めます・・・が、どこで売っているのかすらわからない人の方が多いでしょう。筆者が参考にしたスレッドによれば通販か秋葉原などの電気街で入手するのが一般的ですが、話題に上っても店頭では手に入れられないものも多いようです。場合によってはジャンクを漁ってそこから引っこ抜いて調達してしまう作戦もアリ。まずは関係ないコンデンサではんだの扱いを練習し、コツを掴めれば一石二鳥です。
どのコンデンサと交換するべきかは「電圧(○○V)」「静電容量(μF)」「グレード(ESR・温度)」を基準に決めます。電圧と静電容量は今積んでいるものと同じか、それに近くて値の大きなものを(基本的に下位互換OKです)。グレードは必ず低ESR・105度のものを選びます。電源関係はさらに厳しい性能が求められるためCPUソケット周りへ配置するものについては超低ESRのコンデンサを用意します。
今回はJetwayの740DMPというマザーボードのコンデンサ張り替えに挑戦したいと思います。
低価格化に徹し、CPU周りにも低ESR(超低ESRではない)のコンデンサを配置したなかなかあり得ないマザーボード。注意
深くチェックしたところ、1000μF以上の容量の物は12本全てもっこりしていました・・・。
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もこもこ |
コンデンサなど持っているはずもないため、調達するところから開始。今回用意する品は以下の通り。
実装箇所 | 電圧 | 静電容量 | 本数 | 備考 |
CPU周辺 | 6.5V | 1500μF | 6本 | 超低ESR |
電源コネクタ脇 | 16V | 2200μF | 2本 | - |
その他各地 | 6.5V | 1500μF | 4本 | - |
手持ちのジャンクパーツを漁ったところ、同じくGSC製コンデンサが爆発して廃棄予定だったマザーボード・Epox 8RDA+に超低ESRとおぼしきSANYO製コンデンサが6個積まれているのを発見。CPU周りにこれを使うことにし、残りはネットで紹介されていた秋葉原の三栄電波で調達。
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ニッケミKZE |
屋台のように雑然とした店構えはいかにも昔の秋葉原的佇まいでしたが、ニッケミKZEにはご丁寧にも”マザーボード用”なるPOPがつけられており、すぐ見つけることが出来ました。値段は6個で合計1080円。決して安くはありません。
いよいよマザーボードにはんだごてを入れます。まあ、いきなりは怖いので適当な大きさの爆発済コンデンサで練習しているとはいえ、本番は1個たりとも失敗の許されない一発勝負。
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手順1 |
まずはマザーボードの表と裏を見比べてコンデンサの足を見つけます。
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手順2 |
足に直接こてを当てても熱がうまく伝わらず、いつまでたってもはんだが溶けません。先に手持ちのはんだを溶かして足に盛ってやり熱を伝わりやすくします。
そのまま一緒に溶けるのを待つことしばし。うまく溶かせていれば表面のコンデンサをぐにぐに傾けるだけでするっと足が抜けます。あとはもう一方の足も同様に。
一発で抜けない時は、両足を交互に少しずつ傾けて抜きます。何よりも落ち着いて焦らないことが重要。
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手順3 |
引き抜いたら表面を見て足の極性を確認し、コンデンサに印を付けておきましょう。普通は上の写真のように極性が印刷されているはずです。
ちなみに上に写っている黒い泥のような物は爆発したコンデンサから漏れた電解液。もはや言葉もありませんな・・・。あとで楊枝でこすり取りました。
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手順4 |
引き抜いた後に残ったはんだには更に新しいはんだを付け足してやり、ケーキのホイップのような形状にして・・・
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手順5 |
ニッパーでパターンを傷つけないようにそっと挟んでむしってやれば綺麗に取り除けます。
但し穴の中のはんだまで取り除くのは難しいうえ、代わりを刺し込むとき再びはんだを足してやる必要があるため、あまりやる意味のある行程ではありません。
今度はコンデンサを刺し込みます。
こてを手に取る前にコンデンサの極性を確認しておきましょう。新品ならば足が長い方が+極になります。極性を覚えたらニッパーを使って両足共に1cmくらいの長さに切断します。それから穴にはんだを足し、両極を交互に熱して少しずつ刺し込んでいきます。
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手順6 |
うまく入った図。片側から一気に!という作戦をもちろん筆者も試しましたが、もう一方の足がどうしてもうまく入らず断念。引き抜くときはともかく、刺し込むときはじっくり時間をかけて交互にこてをあてましょう。
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手順7 |
長く飛び出した部分をニッパーで切り取ってできあがり。はんだのヤニは楊枝でこすり取ります。
勢い余ってこて先で、あるいは細かいところのゴミを取ろうと極細ドライバーを使っていたらパターンをひっかいてしまったなんて場合は、あわてず騒がず断線した所を鉛筆でなぞってやりましょう。するとあら不思議、何事もなかったかのように再び起動・・・することもあります。
このあたりはK7-Athlonのブリッジクローズでもよく使われる小技ですね。うまく動いたら自作PCの神に感謝でも捧げつつ忘れずに瞬間接着剤かビニールテープで修理部分を保護しておきましょう。
とりあえず一発目はコケるかなくらいの気持ちで起動チェックをしたところ、全く問題なく起動してしまいました。
個人的超フェティシズム写真
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個人的超フェティシズム写真 |
CPU周りのSANYOに大型・大容量のニッケミKZE、そして輝くSiS740ノースブリッジ(ヒートシンクは交換のため一時的に外してあります)。いやはや、たまりませんな!!
CPUの消費電力増大とともに、コンデンサの品質はますます重要な要素となりつつあります。
購入時に爆弾を抱えたパーツを買ってしまわないよう正しい知識をつけるとともに、いざとなれば自力で修理できるだけの技術が今後はますます重要になってくるかもしれません。
そうでなくとも一期一会であることの多いPCパーツの寿命を永らえさせられる技術は、自作PCユーザーならばきっと役に立てられるはず。必要なのは何より度胸。大切な伴侶を捨ててしまう前にダメ元で挑戦してみるだけの価値は間違いなくありますよ。