■魁!静音PC!!
- 静音PCのための電源選び -

・電源を選ぶ意味とは?
PCの静音化で大きな壁となるのが電源の静音化です。
電源の静音化とはすなわち電源に内蔵されているファンを黙らせること。しかしケースファンなら様子を見ながら回転数を絞ったり、交換してしまうこともできますが、電源に付いているファンはうるさいからといって分解して交換してしまうわけにもいきません。

・・・まあ自分はやったことがあるんですけど、時には数百ワットの大電圧がかかるPCの心臓部、下手をするとPCあるいは家ごと燃えますので、よい子でなくても真似しちゃダメです。

そんなこんなで静音化しにくかった電源周りですが、近年”変換効率”というものがクローズアップされるようになり、これを目安に静かな電源を探せるようになりました。

電源は故障や劣化、容量不足と交換する機会も多いパーツです。改めて電源について基礎から勉強して、よりよいPC生活を目指しましょう。

・デスクトップPCに使われる主な電源の規格
まずは自分のPCケースに装着されている電源の規格を知りましょう。
下の写真を参考にして、自分のPCに搭載されている電源の[高さ][幅]を測ってみてください。
電源ケーブルの挿し込み口がある方が正面(ケースに取り付けると後ろ向きになりますが・・・)です。

電源サイズの測り方
(本記事中の[高さ]・[幅]・[奥行き]の表現はこの写真のとおり統一します)

あとは下の表に照らし合わせれば、電源の規格が分かります。

規格高さ
ATX150mm86mm
SFX(A)100mm50mm
SFX(B)100mm63.5mm
SFX(C)125mm63.5mm
SFX(D)100mm63.5mm

実際にデスクトップPC用に販売されている電源はATX規格のものがほとんどで、他にはSFX(C)規格のものがわずかにある程度。それ以外の規格だと交換しようにも市販品の選択肢がほとんど無かったりします。

さらに「この表のどれにも当てはまらない」という人の電源は、メーカーPCなどの独自規格電源かもしれません。このようなマイナー電源の場合は純正品を取り寄せるか、AC電源化する以外、交換は望めない可能性が高いです。

・実は奥行きが一番重要
さて、交換したい電源が無事ATX規格だった人にも一つ注意を。
先ほどの測定では[高さ][幅]だけを測り、[奥行き]は無視しました。

正式にはATX規格にも奥行きの設定がありますし、[高さ][幅]の寸法が同じで[奥行き]の設定だけが違う“PS3”という別規格もあります。しかし実際に売られているATX電源の奥行きはとにかくバラバラで、「同じシリーズの製品なのに電源容量によって奥行きが違う」なんてものも珍しくありません。

ATXだろうがPS3だろうが、ケースへの取り付けは正面のネジ穴さえ使えればどうにかなってしまうことが多いので、

赤い矢印で指したところがケース取り付け用のネジ穴

[奥行き]を判断する基準は、ケース内のスペースに余裕があるかどうかで決めてしまって構いません。

電源取り付けに必要なスペース

購入時にうっかりしがちなのが、実際の取り付けには本体の奥行きに加えて電源後ろ側から飛び出すぶっといケーブルの束を取り回すスペースが必要になる点です。

下で述べるプラグイン式の電源は不要なケーブルを取り外してしまえるので取り回しが楽になります。

・グラフィックボードは別格の大喰らい
もう一つ電源を選ぶ前に確認しておいて欲しいのが、“拡張スロットにグラフィックボード(GPU・ビデオカード)が挿さっているか“という点。

増設グラフィックボードの消費電力はPCパーツの中でも段違いに高く、「ショップブランドのBTOパソコンを買ったけど、3Dゲームもやりたくなったから後付でグラフィックボードを追加した」なんてケースだと、増設後のピーク電力が数倍に跳ね上がったなんてことは珍しくありません。グラフィックボードが拡張スロットに挿さっているか否かで、必要な電源容量は大きく変わります。

大電力を消費するグラフィックボードには専用の電源コネクタ(PCI-Express補助電源コネクタ)が備えられています。

PCI Express 補助電源コネクタ

PCI-Express補助電源には6ピン・8ピンの2種類があり、8ピンの方が大電力を供給できます。また補助電源ケーブル1本で賄いきれない場合は複数のケーブルを接続する必要があります(上記写真だと6ピンコネクタが2つ並んでいます)。

「グラフィックボード増設に合わせて電源も強化したいけど、どのくらいの容量のを買えばいいか分からない」という場合は、グラフィックボード本体のコネクタを確認してピン数やケーブル本数などの条件を満たした電源を選ぶのが確実です。

PCI Express 補助電源ケーブルについての解説はこちら

・変換効率と電源容量の密接な関係
現在市販されている電源は容量が400W~800W程度のものが主流ですが、グラフィックボードを搭載でもしない限り最高消費電力が200Wを超えるような構成のマシンは滅多に存在しません。

・・・ということは、市販されているほとんどの電源が超オーバースペック状態なのかというと必ずしもそうではなく、ここで”変換効率”に注目することになります。


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PCの電源は家庭用100Vの交流電源を3.3V・5V・12Vの直流電源に変換して各デバイスに供給しているわけですが、100%全ての電気を変換することは出来ず、必ず変換ロスが発生します。

例えば変換効率が80%の電源があったとして、この電源で200Wの電力をPCに供給するためには・・・
というわけで、250Wの電力が必要になるわけです。

PCに200Wの電気が行って、残りの50Wはどこに消えてしまったかというと・・・熱になります。
電源ファンがブォンブォン唸りをあげて排出している熱は、この変換ロスによって生まれたものなのです。

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大体話が見えてきたでしょうか?
そう、電源を黙らせるには変換ロスが少ない低発熱の電源、つまり変換効率がいい電源を選べばいいんです。

電源の変換効率は各製品のパッケージに印刷されている『80 PLUS』という認証のマークを見れば一目でおおよその性能が分かるようになっています。

パッケージに印刷された80 PLUSの認証マーク

日本国内向けの100V電源には5つのランクが設定されており、それぞれのマークが示す変換効率は以下のとおり。

ランク電源負荷率
20%50%100%
80PLUS
(STANDARD)
80%80%80%
80PLUS
(BRONZE)
82%85%82%
80PLUS
(SILVER)
85%88%85%
80PLUS
(GOLD)
87%90%87%
80PLUS
(PLATINUM)
90%92%89%

PC電源は容量に対して50%の負荷がかかっている時が最も変換効率が良くなります。

静音性を突き詰めるならおおよその消費電力を各パーツのスペックシートから計算するか実測して割り出し、通常使用する消費電力の2倍の容量を持つユニットを選ぶのが最も理想的な電源選びといえます。

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単純に80PLUSのランクだけを目安に選んでも、ゴールドあたりになってくると発熱が少ない低負荷時にはファンが停止、または完全ファンレスで動作OKなんてものまで見つかるようになります。

Amazonの80 PLUS PLATINUM電源検索結果


Amazonの80 PLUS GOLD電源検索結果

最上位のプラチナでもだいぶ価格のこなれた製品が出てきていますので、静音PCを目指すならこのあたりのランクから自分の環境にとって最適な製品を選びたいところです。

・PC電源に関するその他の機能
電源選びなんて上に書いたところまで押さえておけばまず問題ないんですけど、もう少し細かい部分の解説を続けます。

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A.各電圧ごとの最大供給電力
電源が3.3V・5V・12Vの各電圧に供給できる電力量は、製品のパッケージやホームページで確認できます。

パッケージに印刷された出力一覧

スペックに記載されている電源出力・○○○Wというのはこれの合計です。
電圧(V)に電流(A)をかけると電力量(W)が計算できる。中学校の理科で習いましたね!

まあ「俺はこのマシンにHDDを50台増設するぜ!」というような極端にアンバランスな構成にするのでもない限り、あまり気にする必要はありません。

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B.プラグインケーブル
奥行きのところで既に述べたように、電源から伸びる大量のケーブルはうまく処理しないと見た目が悪いだけでなく、ケース内のエアフローを阻害する原因にもなります。

プラグインケーブルは本体から取り外し可能で、ケーブルの量を必要最小限に減らせるのがメリットです。

プラグインケーブルを全て外した状態の電源背面

全て外して主電源ケーブルだけにしてしまうとかなりすっきりしますね。このままじゃHDDも繋げないのでPC起動しませんけど!

プラグインケーブルのコネクタ形状は製品によって異なるので、使い回しはできません。

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C.過電流保護回路
電源の故障などにより異常な電流が発生した際、自動的にPCをシャットダウンします。
これも基本的に搭載されているはずのものなのであまり気にする必要はありません。

高級電源の中には独自機能として大量の保護機能が搭載されている電源もありますが、同じく大量の保護機能の付いたマザーボードと組み合わせると「ちょっとしたことであちこちの保護機能が作動してしまってそもそもまともに稼働しない」なんて良く分からないマシンが出来上がることがあります。

機能が多すぎるのも良し悪しですな。

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D.冷却ファン
電源ユニットに備え付けられた冷却ファンについての注目点は「ファンの口径」「回転数」「LED内蔵」などがあります。

ファンの口径は大きければ大きいほど風量を稼ぎやすくなります。筐体サイズとの兼ね合いで電源に使われるのは12cmファンが一般的で、稀に14cmファンを搭載したものもあります。

回転数は可変速になっているものが主流で、「電源負荷」と「温度」のどちらかを基準に回転速度を自動調整するようになっています。どちらかといえば温度を基準にして回転数を制御するタイプの方が、静音化にも本体冷却にも有効だと思います。

LEDはインテリアとしての演出(?)用で、もちろん性能には影響しません。夜ケースを開けて中をいじる時には明るくて便利なことがあります。


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E.ボトムレイアウト対応電源ケーブル
大型PCケースなどで採用されている電源をケースの床面に置くレイアウト(ボトムレイアウト)は、通常の電源ケーブルの長さだとマザーボードの電源コネクタまで届かないことがあります。

通常のレイアウトボトムレイアウト

ボトムレイアウト対応が謳われている電源はケーブル長がかなり長めに設定されており、ボトムレイアウト型のケースユーザーが陥りやすい落とし穴への対応が図られています。

別の解決手段として電源ケーブルの延長パーツを使う手もあります。
詳しい解説はこちらへ

ATX 4pinまたはEPS 8pinの延長ケーブルもセットで必要になりますのでお忘れなく。

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F.日本製コンデンサ・105℃コンデンサ
メジャーなメーカーの製品なら大抵パッケージに謳ってある・・・と油断して廉価モデルを買うとどこにも表記が無かったりします。

適材適所できちんとしたものが使われていれば、いちいち問題にするほどのことでも無いのですが、一言で高品質を表せる分かりやすい売り文句として採用しているメーカーが多いようです。

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G.保証期間
保証期間の長さはメーカーの自信のあらわれです。
「なんだか性能の割にやけに安いんだけど保証期間が1年しかない」といった製品は避けた方が賢明です。

・電源ケーブルのあれこれ
最後に電源から伸びる各種ケーブルについて簡単に説明します。

ケーブルとコネクタの本数は電源によって異なり、何が何個ずつ付いているかはパッケージやホームページ等のスペック欄で確認できます。

コネクタの数が足りない、短くて届かない、出っ張って他のパーツと干渉するといった場合は、市販の変換・分岐ケーブルや延長ケーブルを噛ませて使うこともできます。

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A.24pin / 20pin ATX電源ケーブル
マザーボードに接続するメインケーブルです。

現在のマザーボードは24ピンコネクタが採用されていますが、かつて主流だった20ピンコネクタにも対応させるため、”20ピン+4ピン”というように分割式になっていることもあります。”20ピン+4ピン”タイプを24ピンコネクタに挿すときは、ひとまとめにしてそのまま挿し込みます。

ケースと電源の組み合わせによっては、ケーブルが短くてマザーボードのコネクタまで届かないことがありますが、延長ケーブルで延ばすことが出来ます。

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B.ATX4pin / EPS8Pinケーブル
CPUに電力を供給するケーブルでマザーボードに接続します。
写真のように”4ピン+4ピン”形状になっていることが多く、4ピンの時はATX4pin、2つまとめて8ピンの時はEPS8Pinと呼ばれます。

「マザーボードがEPS8Pinコネクタなのに、電源にATX4pinケーブルしかない」という場合でも、マザーボードによってはそのままATX4pinを挿せば動くこともあります。説明書等を確認してください。挿し方はロックする爪を上にしてコネクタの左側4つの穴に挿入します。

ATX4pinをEPS8pinに変換するケーブルも売られています。

ATX電源ケーブルと同様に、短くて届かないときのための延長ケーブルもあります。

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C.PCI Express 補助電源ケーブル
グラフィックボードなど特に大電力を消費する拡張カードに接続します。

マザーボードの電源ケーブルは「あるものだけ挿せばOK」と、割と適当な感じで動いてしまいますが、PCI Express 補助電源ケーブルはきちんと規定数を挿さないと画面自体が映りません。

写真のものは”6ピン+2ピン”で、6ピン・8ピンどちらのコネクタにも挿せるようになっています。電源によっては6ピンケーブルしか付いていないものもあります。

ケーブルが足りないときのための4pinからの変換ケーブルも市販されていますが、グラフィックボードに接続するPCI Express 補助電源ケーブルの不足は電源容量の不足とイコールですので、根本的な解決にはならずにむしろ動作が不安定化したりします。

PCI Express 補助電源ケーブル本数の多い、より大容量な電源への換装を検討してください。

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D.SATA電源ケーブル / 4pinペリフェラルケーブル / 4pinFDDケーブル
SATA電源ケーブル4pinペリフェラルケーブル
(4pin大ケーブル)
4pinFDDケーブル
(4pin小ケーブル)

SSD・HDD・光学ドライブ・各種アクセサリー類など様々な機器に接続します。

コネクタを増やしたり、相互に変換したり、あるいはコネクタ形状をL字型に変えるなど非常に多くのバリエーションが販売されており、ケース内配線を見直すときなどにも重宝します。



稀に少し古めのHDDなどで、SATA電源コネクタと4pinペリフェラルコネクタを両方備えたものがあります。これはケーブル両対応の製品ですのでどちらでも好きなケーブルを”片方だけ”接続してください。