「ゲーミング○○」というPCパーツが流行りだしてしばらく経ちますが、その中でもゲーミングディスプレイは特に人気のジャンルの一つです。
普通の液晶とゲーミングディスプレイはどこが違うのか?
メーカーサイトで調べると「応答速度が早い!」「リフレッシュレートが高い!」と謳われていて、「普通の液晶(ぼやけた車のイラスト)」と「ゲーミングディスプレイ(くっきりした車のイラスト)」が並べられているのがお約束ですが・・・正直なにが言いたいのか良く分かりません。
というわけで買ってきました。
実物を手に入れて色々いじくりまわしてみて、やっと応答速度やリフレッシュレートの意味が理解できました。
周りから聞かれることも多い話ですし、どうにかしてこのへんをうまく説明できないかなと思案していたら、そういえば今のiPhoneは超高速度撮影が出来るんだったと思い出し、ディスプレイに向けてみたところ予想外に面白いものが撮れたため、このへんの資料を添えて解説記事を書くことにしました。
液晶が信号を受け取ってから画面の色を実際に変化させるために必要な所要時間(遅延時間)です。
画面に表示される黄色い標的をクリックして撃つゲームがあったとします。この標的は10フレームという単位で点いたり消えたりします。
PC内部で当たり判定がオンになるのと同時に液晶画面には黄色い標的が表示され、オフになると標的が消えます。当たり前ですね。
ところが実際の液晶は信号を受け取ってから画面の色を変化させるのに遅延が発生するため、PC内部で処理されている当たり判定と、液晶の表示にラグが発生します。
|
判定処理と液晶表示のズレを スローモーションでイメージした図 |
当たり判定がオンになった瞬間はプレイヤーが標的を画面上で視認出来ず、逆にオフになった瞬間は撃てば当たるように見えているにも関わらず当たり判定が無くなっている状態です。
「応答速度が早い」液晶は色変化が早いため、当たり判定と液晶表示のラグが通常モデルの液晶より少なくなります。
| |
通常の液晶 | 応答速度が 通常の半分の液晶 |
例えばオンラインFPSゲームで角を曲がった瞬間に敵と出くわして撃ち合いになった場合、応答速度が速い液晶を使っていた方がトリガーを引くまでの反応時間が一瞬早くなります。
「それで変わることあるの?」と思われるかもしれません。
勝てるようになる割合が全く変わります。筆者の実体験です。
-
応答速度の速さは、動画を再生したときにも顕著な差となって現れます。
サンプルのgif動画を作成しましたのでご覧ください。
※サンプルgifはファイルサイズが大きい(約70MB)ため、別窓にしてあります。読み込みにも時間がかかりますのでご注意ください。
毎度アイマスで申し訳ないんですが、60fpsでアニメ調の絵が動きまくる動画というとこれより優秀な素材が手持ちに無いということでひとつご容赦下さい。
同じ動画を、応答速度に関しては特筆するところのない普通の液晶・EIZO CX240と、ゲーミングディスプレイ・ASUS ROG SWIFT PG279Q、そして買った瞬間に残像感がヤバい気がしたSHARPのテレビ・LC-22K30で再生し、その様子をiPhoneSEの240fpsスローモーションモードで撮影してgif化しました。
終始輪郭がブレ続けるLC-22K30は別として、PG279QとCX240の差はあまり無いように見えますが、手先など動きの早い部分の残像感にはそれなりに差があり、実際の速度で再生するとより顕著に違いを感じます。
また、最後にカメラが切り替わるシーンで、CX240とLC-22K30の画面がグラデーション状に変化するのに対し、PG279Qが一瞬で切り替わっている点にもご注目ください(一瞬しか写っていなくて申し訳ないですが・・・)。
-
応答速度はあらゆるソースに対しても影響がある機能です。
ゲーム、動画以外にTVのスポーツ観戦などでも上記のような違いが感じられるでしょう。
1秒間に液晶画面が何回書き換わるかを示す数値です。数値が大きいほど同じ時間あたりの枚数が多くなるため、動きがなめらかになります。
| |
アニメーション枚数150枚 | アニメーション枚数100枚 |
| |
アニメーション枚数75枚 | アニメーション枚数40枚 |
※丸の動きのタイミングが上下段でずれている場合はページを読み込み直すと治るかもしれません。
上の画像は同じ動きのアニメーションを150枚、100枚、75枚、40枚の画像で表示したgif動画です。枚数が多いほど動きが滑らかになります。秒間あたりのフレーム数は特にFPSや格闘ゲームなどで重要視されます。
ちなみにこのgifはどんな液晶でも違いが分かるように制作したため、滑らかに動いているように見える左上の画像でも実際のゲーム画面・動画と比べて1秒あたりの枚数がかなり少なめ(処理落ちしていなければリフレッシュレート換算で24fps)です。
-
リフレッシュレートと関わりが深く、名前もよく似た用語に”フレームレート”というものがあります。
簡単に説明するとリフレッシュレートは「
1秒間に液晶が何フレーム表示できるか」を示す数値で、フレームレートは「
PCやゲーム機などが1秒間に何フレーム生成できるか」の数値です。
|
例えばリフレッシュレート120fpsまで表示できる液晶を持っていたとしても、PC本体で作れるフレームレートが60fpsしかなかったら、液晶で表示されるフレーム数は60fpsになります。
|
逆に毎秒150fpsでフレーム生成できるPCを持っていたとしても、液晶のリフレッシュレートが最高60fpsまでなら、液晶に表示されるフレーム枚数はやはり60fpsになります。
|
高リフレッシュレート表示に対応した液晶と、高フレームレート生成が可能なPCを揃えることで滑らかなゲーム画面が表示されます。
但し実際のゲーム中に出力される画面のフレームレートは処理に応じて大きく上下するのが普通で、フレームレートを維持するにはより高性能なPCが必要になります。また、ゲームによってはフレームレートの上限が固定されているものもあります(設定変更やMODの導入で制限解除できる場合もあります)。
更にコンシューマ機のゲームは、接続に使うHDMI規格で転送できるデータ量に限界があったりする都合でフレームレート上限が30fpsや60fpsに固定されていることが多く、高リフレッシュレート液晶の恩恵を受けられる機会はほぼありません。
映画の再生でもblu-ray規格に収録される場合のフレームレートは最大で59.94fpsと定められており、それ以上のソースは一般には存在しません。このため高リフレッシュレートが役に立つのは現状ではPCゲームをプレイするときに限られます。
-
よくフレームレートの高い動画は「ぬるぬる動く」と表現されます。
どんな感じになるのか、先ほどと同様に実物の液晶に表示されたものをiPhoneSEでスローモーション撮影してみました。
始めはゲームのデモで撮影したんですけど、出来上がりがいまいちだったため適当なソフトを探し回った結果、MikuMikuDance(MMD)が撮影に非常に好都合な機能を取り揃えていたため、またしてもなんかそんな感じのアレです。
※サンプルgifはファイルサイズが大きい(約110MB)ため、別窓にしてあります。読み込みにも時間がかかりますのでご注意ください。
MMDは再生時のフレームレートを30fps・60fps・無制限と切り替えられるため、設定を変えながらPG279Qで表示したモーションを撮影しました。165fpsはPG279Qで表示できる限界のリフレッシュレートです。
165fpsだけ枚数が段違いなだけあって別次元の滑らかさになっているのが良く分かります。
実際のゲームプレイでは動きの早い部分が半透明でコマ送りに見える感じが減り、FPSゲームでは弾道が目で追いやすくなったり、フルオート射撃で画面が揺れている最中でも照準の修正がしやすくなるといった恩恵があります。
-
上述のとおり高リフレッシュレート液晶では要求されるPCスペックも比例して高くなります。通常のディスプレイなら1秒間に60fps=60枚分の画面を作ればいいところを、120fpsなら120枚、165fpsなら165枚作らなくてはならないわけですから、その要求の高さたるや推して知るべし、です。
自分は割と古めのFPSしかやりませんが、それでもFPSが上限に貼り付くことは滅多にありません。大体のゲームで平均120fps程度です。設定を変えればもっと上げられるはずではあるものの、単純にfpsだけ上げれば見やすくなるものでもありませんし、バランス的にはこんなところかなと。