毎週溜まりまくる録音されたラジオ番組を消化するために、電車に乗っている時や洗車・外作業の時は片耳にイヤホンを突っ込んでいるのが常で、動きまわってもケーブルが引っかからないよう腰のベルトにつけたbluetoothレシーバーに服の下を通したイヤホンケーブルを繋ぐのが自分の基本スタイルです。
ところが昨今、何故かイヤホンケーブルが120cmに統一されてしまい、大量に余るケーブルが上着の裾から垂れてダサいうえにどこかに引っかかる。束ねればオモリのように揺れまわってイヤホンが突っ張るなど深刻な事態に直面。ケーブルの長さが気に入らないという理由でリケーブル可能なMMCXタイプのイヤホンを導入したりしていました。
現在使用しているSONY SBH50とONKYO IE-FC300&ヤフオクを通じて好みの長さに作ってもらった手作りケーブルのセット。音はいいんだけど取り回しがどうにもイマイチ。
完全ワイアレスなヘッドホン・EARINの話はKickstarterに登場した頃からなんとなく聞いてはいたんですが、まあバッテリー持続時間と価格がね・・・とパスしていました。
しかし日々溜まり続けるイヤホンケーブルへのストレスがある日爆発、「あ゛あ゛!?前に言ってたアレ、日本でも正式発売になったんだって?オウ、もうこの不思議なカードで買ってこいや!!」てなわけで1月中旬にヨドバシ.comで注文。発送は3月頭になるよと連絡が来ていたのが2月10日、唐突に現品が到着しました。
パッケージがきっちり日本語化されている一方で保証書は外装にセロテープ貼りでした。発売以来とにかく売れまくっているそうで、保証書を中に入れる手間も惜しんでどんどん発送してるんですかね。おかげで随分早く手に入れられましたが。
パッケージ背面。
内箱は個人的に見慣れたMDF素材。
蓋には磁石が仕込んであり気持ちの良い開け閉めが楽しめます。
・・・必要か?このギミック・・・。
とりあえず100円玉と並べて記念撮影。
御存知のとおり収納ケースも兼ねており、充電中は赤いランプが点灯します。
収納中はこんな感じですがイヤーピースをつけると結構キツキツ&プラスチックのテンションに任せてパチンとはめこむだけなのでうまく収納するのに少し慣れが必要です。
ちゃんとはまっていないと蓋が閉まらないので「充電のためにしまったつもりが充電されていなかった」というようなことにはなりませんが、内箱に磁石仕込むくらいのこだわりを見せてくれたぶん、肝心の本体収納部分の設計がやや雑なのが余計に残念に感じられます。
収納ケース上面の充電用microUSB端子。
上の穴はストラップホールで、充電中は端子の下側部分が赤く、充電終了後は緑に光ります。
本体の充電ランプとイヤホンの充電ランプはそれぞれ独立して機能します。
それではiPhone5sとペアリングしてみます。
EARINのイヤホンにはボタンどころかインジケーターランプすら無いため、特にbluetooth機器を使った経験がない人だと使い始めは多分戸惑うと思います。まあ安易にランプなんか付けて傍から見たら耳が光ってるように見える超小型イヤホンなんてのはもっと御免なのでこの辺の判断は正しかったと思いますが。
収納ケースから取り出すと自動的にペアリング待ち受け状態になるので、iPhone側からEARIN L (またはEARIN R)を選べばペアリング設定が完了します。初回設定を済ませておけば、次回以降は収納ケースからイヤホンを取り出すだけで自動的にペアリングが開始されます。
Android・iOSそれぞれに専用のモニタリングアプリが配信されており、接続状態やバッテリー残量などが確認できます。初回起動時には収納ケースに記載されているシリアルナンバーの入力が必要です。
少し細かく動作の説明をしますと、両耳使用でスマートフォン本体と接続されるのは常にL側のイヤホンで、R側はL側イヤホンと繋がります。何故R側もペアリング出来るようになっているかというと、収納ケースから片方だけイヤホンを取り出した場合はモノラルモードで鳴らせるようになっているからで、どちらか片方だけケースから出して片耳につけ、もう片方はケースに入れて充電するといった使い方ができるわけです。
L・Rのイヤホンは同じ形で、Rを左耳に入れても特に問題ありません(モノラルモードと言いつつも結局ステレオの片側が鳴っているだけな点に目をつぶれば・・・ですが)。イヤホンを交互に充電しつつ片耳運用すれば、バッテリーの持ち時間はむしろ他のどんな製品よりも長く使える点も本製品のユニークなところといえます。
無事ペアリングが終わったところで音質のチェックに移ります。
おじさんはね、bluetoothの完成度では他の追随を許さないSONYのレシーバーに曲がりなりにもMMCXクオリティなイヤホンを繋いで使ってたから音質にはちょっとうるさいんだよ。我ながら面倒くさいやつだな。
まず耳に装着して聞こえてきたのはSBH50を使って以来久しく覚えのなかったホワイトノイズ。ん、まあこんなものでしょう。
傾向としては今まで使ってきたどのイヤホンよりも自室のデジタルアンプ+スピーカーセットに一番近い鳴り方をします。今までは「この曲、イヤホンで聞くとボーカルがちゃんと前に聞こえるんだけどスピーカーで聞くとなんか後ろに紛れる・・・」と思っていた曲が、EARINではやっぱりボーカルが埋もれる感じになり、良くも悪くも素直だなあといった印象。
また驚くくらい細かい音を拾うため、筆者の好きなピアノジャズライブの音源ではペダルを踏んだ時の音や演者のつぶやき、観客席の咳払いまで聞こえるようになり、より響くようになったホールの残響音と相まって没入感が大幅に高まりました。反面大量のサンプリング音が同時に鳴るポストロックなどとは相性が悪く、いろいろな音がいっぺんに出すぎて訳が分からなくなります。とはいえポストロックの相性の悪さはSBH50の頃から感じていた問題ですが。
ややいただけないのは左右の定位がどうもふらふらする点。左で鳴るはずの音が右から聞こえるというようなレベルではないので普段使いではあまり気にならないと思いますが、静かな環境で聞くとイヤホンの醍醐味である頭の中心で音が鳴る感覚が左右に振れ続けるのが感じられちょっともやもやします。
R側イヤホンの音が一瞬飛ぶDropoutと呼ばれる現象は、満員電車の中だと3~5分に1度くらいの割合でしゃっくりのように発生します。本当に一瞬なんですけどイヤホンの遮音性が元から高いぶん音が飛ぶと耳がキーンとする感じが強く、発生した時は不快感があります。原因はやはり電波干渉によるようで、試しに秋葉原ヨドバシカメラのテレビコーナーで装着してみたら盛大にDropoutしまくってました。スマートフォンとのbluetooth接続が切断されてしまうような不具合は今のところ発生していません。
当たり前の話ですが完全ワイアレスなのでケーブルが擦れた時に鳴るタッチノイズがありません。休日にイヤホンをつけながら作業することが多い筆者にとっては本当にありがたい存在です。
本製品でもう一つ気になるところといえばバッテリーの持続時間でしょう。
iPhoneはbluetooth接続されたイヤホンが切断されると自動で音楽再生が止まるので、前回SBH50レビューの時と同様にライブラリにある長時間のラジオ番組をひたすら再生させ、バッテリー切れで再生が停止になった時間を記録する実験をやってみました。
結果。
・ステレオモード:2時間42分
・モノラルモード:3時間14分
・・・あるぇ?
代理店の仕様表を見るとステレオモード最大3時間・モノラルモード最大11時間って書いてあるんですけど、ステレオモードはともかくモノラルモードの動作時間仕様と違い過ぎじゃね???
謎です。
まあ上述のとおりモノラルモードで左右のイヤホンを交互に充電していけば実際の使用では大幅に使用時間が伸ばせますし、更に収納ケースにモバイルバッテリーでも繋げばいくらでも連続使用できますから、あまり気にしてませんけど・・・。
全体的に完成度の高いEARINですが、現時点でのメジャーな不具合として10分切断問題というのが発生しています。これはモノラルモードで使用していると約10分で勝手にイヤホンの電源が切れてしまうもので、筆者のところでもガッツリ発症したため公式のFAQでメジャーな不具合であることと対策があることを知るまで結構焦りました。
対策方法はごく単純で、モノラルモードで使用を開始したらスマートフォンのアプリを起動し、イヤホンのバッテリー残量がモニターできる状態にします。以上です。
この画面を表示させたらアプリを終了させずにバックグラウンドで動かしておけば電源が落ちることはありません。また、ステレオモードではこの問題は発生しないようです。
そんなわけで怒りに任せて今まで買ったこともないような値段のイヤホンを衝動買いしてしまったわけですが、2週間使ってみた感想は「これで3万円なら安すぎるくらいだな」と思うくらい別次元に快適です。
Kickstarter発祥なだけあって作り手の「こういうのが欲しい!」というコンセプトが非常に明快で、しかも妥協なく作りこまれているのが気持ちよく、そんな面倒な語りを抜きにしても取り回し抜群でしかも良い音がします。
購入前はペアリングがL側のみという情報もあったためバッテリーの心配をしつつの購入でしたが、実際には両耳交互に使えるため片耳で使う限りバッテリーの心配がないことは上で何度か述べたとおり。外出時の使用では基本的に収納ケースもポケットに入れて持ち運ぶため、こまめに外してその都度充電すれば両耳使用でも結構持つなといった印象です。
現状では自分にとっての決定版といえるイヤホンに出会えた気分ですが、同様のコンセプトのイヤホンは今後Appleを筆頭に色々と発売の噂があり、これの買い替えを検討する頃までにはこのタイプ・コンセプトのイヤホンが一大勢力になっていることを願うばかりです。
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