ガラパゴスも悪いことではない、と思ってたんだけど

iPhoneという未曾有のガジェットに触れてから約10日。「飽きた」と言いながらも毎日タッチし続け、ようやくこいつが何者なのか頭の中で整理が出来てきました。

iPhoneとはつまり電話のふりをしたネットワーク端末なのでした。
こいつは電話も出来ますが実態として通話機能はおまけのようなもので、iPhoneという名前自体が携帯キャリアを乗せて回線を貸してもらうための方便だったのではないかとすら思えるほど携帯電話としては適当です。携帯キャリアを通じて手に入れた通信機能はもっぱら「インターネットをポケットから取り出して使う」ためのもの、格好付けて表現するなら「生活のあらゆる場面をワイアードにする」ためのものとして使用されており、iPhoneを「なんかよくわかんないけどすごいもの」たらしめている要因の大半はこのコンセプトによるものだと言っても過言ではありません。

つまりインターネットが生活により密着する形で存在していたらどうなるかを実演して見せている一例がiPhoneなのであって、このアプローチ自体は先進的ではあっても斬新ではありません。もちろん携帯キャリアからうまいこと回線を拝借する条件を引き出せるだけの力を持った企業はそう多くなかったはずですし、それを実行に移したAppleの実行力は大いに評価されるべきです。しかし今後業界が「道を作る携帯キャリア」と「車を作るスマートフォンのメーカー」といった具合に分業していった場合、Appleがその内の一メーカーに埋没していく可能性も低いものではないはずです。

スマートフォンが独立した一つのカテゴリであると見るならばiPhoneの仕様がカテゴリのデファクトスタンダードになることは難しくありませんが、PCと携帯の中間として見られてしまうとMac-iPhoneラインは亜流でありPCの仕様を基準としたスマートフォンに押し切られてしまう事態は十分考えられます。

幸いiPhoneのインターフェイスは多くのユーザーに受け入れられており、圧倒的な数の対応アプリケーションやオプションパーツなどのインフラ面でもAppleは大きなアドバンテージを持っています。これを武器に各携帯キャリアから回線を差し出させ、携帯とは一線を画したスマートフォン≒iPhoneというジャンルを確固たるものにしていくのがAppleの狙いになるのではないでしょうか。

対する特に日本の携帯キャリアからしたらこのようなビジョンは面白いはずがありません。ガラパゴスと揶揄されようとも、築き上げてきたPCともインターネットとも相容れない独自のインフラが現在の彼らの力と富の源であり、iPhoneの求める「回線だけよこせ」の要求は既に手の中にある小王国を単なる道路へと貶めるに等しいことだからです。元々道路屋に近かった後発のSoftbankこそこの要求に応じましたが、既得権益の膨大なDocomoとauが近いうちに要求を飲むかというと・・・どうもありえないことのような気がします。2つの小王国は「時代遅れ」や「的外れ」と言われようとも、本当に危機的状況になるまでは「日本のユーザーはまだスマートフォンを欲していない」と嘘をつき続けるでしょう。

AppleにとってiPhoneはまだしばらくの間特別な存在でいてもらわなくてはなりませんし、iPhoneが今のままである限り日本でのキャリアは当分の間増えないでしょう。残念ながら個人的な推測としてはそんなところです。

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このページは2010年2月 7日に書いたブログ記事です。

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