出先で時間を潰さなくてはならなかったのと、なんだか随分評判がいいらしいのと、椅子が揺れて水が噴き出す映画館に興味があったので、ガラにもなくシン・ゴジラを見てまいりました。こう見えて(?)エヴァンゲリオンは見たことありません。
もう始めから終わりまで「日本人すごい!やれば出来る!これが日本の底力!」という今時のテレビ番組によくあるアプローチてんこ盛りで、今テレビでバカ受けしてるアレをゴジラでやってみましたという感じ。個人的には単なる自慰にしか見えなくて正直嫌いな作り方なんですけど、そんな奴でも「おバカ愛国映画」として割り切れば楽しめる味付けになっているのがうまいところです。
この勝手に分類した「おバカ愛国映画」ジャンル、昔なにか別の映画でも見たことがあったけどなんだったっけと考えてみたら、(1996年公開の方の)インディペンデンスデイにそっくりなのでした。
大統領が宇宙人との決戦を前に演説台に立ち、なんか熱いことを言った終わりに「これが我々の独立記念日だ!!!」って叫んで、聴衆が「Yeahhhhhhh!!!!」と叫ぶシーン。あれを見てアメリカ人は感極まって涙を流し、それ以外の国の人はそれを見て「バカだなー!」ってゲラゲラ笑いつつちょっと羨ましく思ったりもしたわけですが、なんとあれを今度は日本人が出来るわけです。
まあ、もちろんあれを日本でやるといっても総理大臣が国会の演題に立って「皇国の存亡はこの一戦にあり」なんて言う訳はありません。「じゃあどうなるか?」を積み上げていって出来たのがこのシン・ゴジラであって、インディペンデンスデイと比べてみると「コントか!」と突っ込みたくなるくらいやることなすこと逆なのに、結果としては「あ、これ、インディペンデンスデイと同じジャンルのやつだ」と納得できてしまうのが個人的には一番面白いところでした。
例えばインディペンデンスデイが大統領の強力なリーダーシップと個人プレーの積み重ねで話を進めていくのに対してシン・ゴジラの主役は徹底した官僚機構と企業による組織力、核兵器の使用についても前者が物語中盤であっさり核ミサイルを使用(しかも自国の上空で!)するのに対して後者は核兵器に対して凄まじい拒否反応を示します。
極めつけは両者が対峙する脅威そのもので、世界の怪獣王ゴジラ様の歴史と知名度に比べたら、あんな宇宙人はぽっと出もいいとこ。「なんかもう歴史と文化の厚みが違いすぎるんだよなあ」なんて考えているところへ、トドメとばかりにゴジラ様が例の雄叫びをあげ自衛隊マーチが流れてきたもんですから、「このスタッフは愛があるなあ」と不覚にもそこで少し涙ぐんでしまいました。
自分の視点は「現代の特撮、現代のSF」というところだったので終始楽しめましたが、テイストとしては今の日本人に全力で迎合している感が思いっきり前面に出ているので、合わない人には徹底的に合わないでしょう。
ゴジラ映画、特撮映画、日本のSF映画としてはマイルストーンとも言える出来であるものの、味付けの問題で不朽の名作になれるかどうか微妙な影が差す方向に行ってしまった感じの映画でした。もちろん作ってる側はわかっていてそうしたんでしょうし、実際ヒットしなければ話にもならないと考えれば、やっぱりうまく作ったなあと感心させられる、どこまでも上手(うわて)を行く映画でした。
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